企業 AI/代理模型
Salesforce Koa、ワークフロー仕様から訓練環境を生成し、CRMツール操作を120Bモデルに学習
SalesforceはNemotron 3 Superをベースに、合成した企業シナリオ、SFT、GRPOを通じて、初のCRM推論モデルKoaを訓練した。複数ターンのツール使用は大幅に改善したものの、論文では総合性能が依然として最先端モデルに及ばないことを認めており、公式発表の「エラーが3分の1」という数字も自社のCRM評価に基づく。

SalesforceとNVIDIAは、オープンウェイトのNemotron 3 Super 120Bをポストトレーニングし、Agentforceへの統合を予定している企業向けエージェントモデルKoaを発表した。その中核はCRM文書を追加で学習させることではなく、業務プロセス仕様をインタラクティブな訓練環境へ変換する点にある。システムはAgent Scriptの記述から、ペルソナ、データ状態、複数ターンの対話を備えたタスクを展開する。モデルには、商談の更新、カスタマーサポート案件の割り当て、フォローアップの設定といった操作を、適切なツールを呼び出して完了することが求められ、実際にタスクが解決されたかどうかに基づいて報酬が生成される。
訓練は、教師ありファインチューニング(SFT)とGRPOを用いた強化学習の2段階で構成され、NeMo RL、NeMo Gym、NeMo AutoModelが使用された。Salesforceによると、訓練コーパスは14を超える業界の合成シナリオを網羅し、顧客データは使用していない。モデルの重み、ポストトレーニング、推論はいずれもSalesforceが管理し、同社のインフラストラクチャ内に保持される。これにより、企業向けモデルのトラスト境界は、データを汎用の外部APIへ送信する場合とは異なる。ただし、それによってKoa自体がダウンロード可能なオープンウェイトモデルになったわけではない。
論文で特に注目すべきなのは、「仕様から報酬へ(spec-to-reward)」というアプローチだ。データ状態に依存するリクエストについては、別のモデルが回答テキストのみを評価するのではなく、ツール実行後に目標を達成できたかどうかを基準に報酬を与える。結果によると、ベースモデルに対するKoaの最大の性能向上は、複数ターンのツール使用に集中している。Salesforceはさらに、CRM Benchのアクションタスクにおいて、Koaがエラーを3分の1に抑えながら主要モデルと同等以上の性能を達成できるとしている。ただし論文は、Koaが強力なプロプライエタリモデルのベースラインを上回った一方、最も強力な最先端モデルには依然として及ばないと明記している。また、CRM Bench、合成データの分布、デプロイ環境はいずれもSalesforceが管理しているため、外部での再現性は限定的だ。
KoaはすでにSalesforce社内のSlackエージェントで使用されており、一部の顧客が先行試用する。米国リージョンでの正式提供は2026年冬を予定している。今後、エンジニアリングチームは、モデルのバージョンを固定できるか、ツール権限とロールバック機構がどのように公開されるか、さらに企業独自のカスタムオブジェクト、ロングテールのプロセス、悪意のあるツール応答といった条件下でも、仕様主導の報酬設計が信頼性を維持できるかを見極める必要がある。