AI 推論基礎設施
Cloudflare、prefill と decode で精度を分離、GLM 5.2 の decode スループットを最大55%向上
Cloudflare は FP8 KV cache により Kimi K2.6 の並列処理容量を拡大し、GLM 5.2 の decode では INT4 重みを採用した。また、共有 KV cache にページ世代タグを導入し、マルチテナント環境のリクエストが誤ったキャッシュを読み取るのを防いでいる。

Cloudflare は、Workers AI で大規模スパースモデルを提供するための本番構成を公開した。その中核となる考え方は、推論パイプライン全体を一律に量子化するのではなく、prefill と decode のボトルネックに応じて、それぞれ異なる精度を選択することだ。すべての実験にはオープンソースの SGLang が使用され、2段階に分離した H200 デプロイメントが採用された。
Kimi K2.6 では、Cloudflare は decode 段階の KV cache を BF16 から FP8 e4m3 に変更し、格納可能なコンテキストの総量を約68万6,000 token から137万 token に増やした。同じ並列度では、FP8 カーネル自体は実際にはわずかに遅く、たとえば単一リクエストの処理速度は毎秒137 token から125 token に低下した。実質的な利点はメモリ容量の拡大にある。BF16 は並列リクエスト数が32を超えるとメモリ不足になる一方、FP8 は64リクエストと毎秒2,192 token を維持でき、BF16 のピークスループットを約41%上回った。token 当たりのコストも約30%低下したという。
GLM 5.2 の重みは FP8 から INT4 に圧縮され、checkpoint のサイズは705 GB から421 GB に縮小した。8-way tensor parallelism では、GPU 1基当たりの重みのメモリ使用量が約88 GB から52 GB に減少した。decode はメモリ帯域幅に制約されるため、単一リクエストのスループットは毎秒60 token から92 token に向上した。一方、重みを事前に展開する必要がある prefill の処理速度は、逆に毎秒10,160 token から8,660 token に低下した。このため Cloudflare は INT4 を decode のみに使用し、prefill では引き続き FP8 を採用している。
高密度化は、共有キャッシュにおける分離のリスクも増大させる。新しい仕組みでは、物理 KV ページごとに、再割り当てのたびに変化するタグを設定する。decode の前に、リクエストが想定するページとタグを照合し、一致しなければリクエストを中止する。Cloudflare の測定では、スループットと p95 latency のオーバーヘッドはいずれも1%未満だった。ただし、品質に関する結論は主に Cloudflare が独自に選定した benchmark に基づいており、一部は社内テストでもある。エンジニアリングチームは、自社の長いコンテキスト、tool calling、マルチテナント負荷テストを用いて、量子化誤差と分離動作を引き続き検証する必要がある。